卓話


身近なカーボン

2023年8月9日(水

(株)日建設計
代表取締役会長 亀井忠夫君


 地球の平均気温は過去100年で約1℃上昇しています。ご存じのとおり、地球温暖化についての警鐘は繰り返しなされてきました。1972年のローマクラブによる「成長の限界」から始まり、そして本年、広島でのG7サミットの議長声明でも「気候危機は人類待ったなしの課題である」と述べられています。

 本日は「身近なカーボン」と題し、建築や都市における、地球温暖化の原因であるCO2の発生とその対応についてお話します。

 まず、皆さんの呼吸で出される二酸化炭素は重さで言うと、一日一人当たり1圓任后B寮僂砲靴泙垢500リットル、これは500mlのペットボトルで1000本分です。そして、日々の暮らしのために日本全体で排出されているCO2の量を一人当たりにしてみますと、その呼吸の量の20倍になります。年間にすると、重さで7.6t、体積では500mlのペットボトル約7,700,000本となります。この一日一人当たりの排出量は、主要先進国では1位アメリカ、2位ロシア、3位日本で、日本はアメリカの約6割にあたります。ヨーロッパ諸国を見てみますと、フランスやイギリスは少なく、フランスは日本の約半分です。ドイツは日本よりやや少ない程度です。

 次に移動に要するCO2排出量を見てみましょう。一人当たり同じ距離を移動するために、ガソリン車は電車の約8倍の排出量が出ます。電気自動車はガソリン車の約4割です。ウクライナでは戦車が走り回っていますが、電車の約100倍の量です。

 ここから建築と都市の話になります。日本全体のCO2排出量は、年間約11億800万トンです。その内、既存建築物の運用のために排出されるCO2は約3割を占め、これはOperational Carbonと呼ばれます。

 建物の用途別で見た場合、CO2排出量が群を抜いて多いのは大量の電気を消費するデータセンターです。単位面積あたりで言いますと、戸建住宅の約18倍、事務所ビルの約8倍の排出量です。さらに稼働率の高いデータセンターでは事務所ビルの50倍以上になる場合もあります。社会全体のDX化のためにも電気使用量や排熱の少ないデータセンターを考えだす必要があります。

 建設時やその後の改修工事などに伴う、使用される材料や工事そのものに伴ってその建物に内包される、いわゆるEmbodied Carbonにも着目する必要があります。事務所ビルでは新築時のEmbodied Carbon はOperational Carbonの15年分に相当します。

 Operational Carbonについては、個人ひとりひとりの行動をどのように変えていくのかということもキーポイントです。私の所属する日建設計では、毎日の一人当たりのCO2排出量をカウントできるアプリを開発しました。残業時間など少数の人が複数の階に散らばっている場合、まとまった階に誘導することで、照明・空調ONの階を限定しCO2削減に貢献できます。個々人の貢献量に応じてポイントを付与し、社内のカフェでドリンクなどに交換できる仕組みをつくり、社員の省エネ行動を後押ししています。

 カーボンニュートラルに向けたプロジェクトの例としては、セラミックのチューブでできたルーバーを建物に纏わせ、その中に雨水を循環させることにより蒸散効果により建物とその周辺を冷やしているNBF大崎ビル、自然通風や自然採光を主体として、生徒自ら操作する仕組みもつくりゼロエネルギーを実現した岐阜県の瑞浪北中学校、建替えではなく改修によってヴァリューアップした、1974年に建設された超高層ビルである新宿住友ビルがあります。

 延べ面積3,000坪以下の中小ビルは東京都区部でストック全体の40%(面積比率で)、地方都市では60%を占めており、また新築ビルと比較して環境対応されたビルの割合が少ないことから、築古の中小ビルの環境改修は重大なテーマといえます。 今後、建設工事の発注先を決めるにあたり、コストや工期だけではなく、工事に伴うCO2排出量も含めて評価されるようになると思われます。

 地球全体で現在のCO2排出量は1900年に比べて18倍、一人当たりでは3.5倍になっているそうです。2050年カーボンニュートラル達成のためには、2030年までに1950年代の一人当たりの排出量にしていくことが必要とのことです。


私の生い立ちと洋上風力発電の可能性

2023年8月9日(水)

戸田建設(株)
代表取締役社長 大谷清介君


 私は道産子であります。北海道の歴史は浅いもので、道産子の誰もが明治以降、内地の各地から移住してきた先祖を持っています。我が家も3代前の曾祖父、4代前の高祖父が明治17年に広島県から移住して、現在の北広島市となっている原始林で覆われた開墾地に入植しました。

 北海道には内地から移住開拓して村落を形成して、そこに故郷の名を地名としているところが沢山あります。奈良の十津川から明治22年の大水害で離村した農民が移住して北海道滝川の近くに新十津川町。釧路市鳥取とか、洞爺湖の近くの伊達市などは北広島と同じような時期に、士族が移住して開拓された町です。

 私は昭和33年札幌市で生まれ、北海道教育大学付属札幌小・中学校、札幌南高校を経て、北海道大学工学部建築工学科を卒業しました。大学ではハンドボール部に所属し、ゴールキーパーを務めました。大学4年時のある大会では東大と戦い1点差で負けましたが、東大チームの主将は、現在の法務大臣齋藤健さんでした。先日、その齋藤大臣に紹介されて、福井様が会長のハンドボール愛好家の政財界の集まりにも出席させていただきました。

 大学卒業後の昭和57年に戸田建設に入社して、34年間、東京支店で施工管理に携わってきました。現場をやってきた人間にとって、造った建物が自身のキャリアであり、生涯残る作品であります。

 担当した現場全てに思い入れがありますが、とりわけ、経団連の向かいにあります、大手町フィナンシャルシティグランキューブ&星のや東京は、私のキャリアの中で最後に現場代理人として携わった建物ということもあり、思い出深いものです。

 この工事は、地下4階地上31階延べ床面積20万屬猟狭眩悒咼襪肇曠謄訶錣24か月で造るという超短工期の工事でした。1日の最大作業員数は3,308人、弊社の現場社員はピーク時151名。働き方改革の現在では考えられない、24時間363日稼働。大晦日と元旦だけ閉所して、平成28年4月に竣工しました。この建物は、私の生涯にとって記念碑的な作品となりました。

 その後、千葉支店長、関東支店長を経て、2年前に社長に就任し、現在に至っております。

 次に、洋上風力発電についてお話させていただきます。
 洋上風力発電には着床式と浮体式の大きく2種類がありますが、弊社では長崎県五島福江島沖合5km、水深100mの海域で日本初の浮体式洋上風力のウィンドファームを建設しております。

 日本は海に囲まれており、洋上風力に適した海域がたくさんあります。排他的経済水域を含む海域面積は国土の11.8倍で447万k屐△覆鵑叛こΔ6番目の面積を有しています。国土の面積では38万k屬61位なのに海洋面積は6番目ということです。この海を活用しない手はありません。ただ、日本の周辺海域は遠浅の海岸が多い欧米とは異なり、水深が急激に深くなっているため、水深50m程度までが適用範囲となる着床式洋上風力発電では、日本周辺で200GWしかポテンシャルがないといわれています。

 一方、浮体式は水深200mまでに限定したとしても、そのポテンシャルは着床式の5倍1,000GWまであるといわれており、これは現在の日本の一次エネルギー消費量の2倍です。エネルギー自給率最低の我が国が浮体式洋上風力だけで自給率200%に達することができる。洋上風力発電は2050年CNに向けて、再生可能エネルギーの主力電源へと期待できる可能性を持っています。

 しかし、浮体式洋上風力発電には、風力発電機の入手や浮体の大型化・量産化、送電網の整備など解決すべき課題があり、これらは一企業でどうなるものではありません。オールジャパンで取り組むことで、洋上風力発電が地球温暖化という課題を解決する鍵となり、日本が環境先進国になれると考えます。

 結びに、本ロータリークラブでは出席のたびに新たな出会いと、親切な好意と友情をいただいております。企業経営と共に当クラブで培った関係性をもとに社会奉仕に貢献してまいりたいと思います。